痔の治療の基本は保存療法
「痔の治療=手術」と思い込んでいる人はいませんか?
あなたの痔の症状や生活パターン、希望によって、治療法の選択も変わります。
I度やII度の軽度の痔核なら、薬の使用と生活習慣の改善で、症状を和らげることもできます。
また、重症の痔核でも、もちろん生活習慣の改善は欠かせないポイントです。
どの段階の痔核であっても、最終的な治療法の決定権は、あなた自身にあります。
また、より負担の少ない新しい治療法も開発されています。
主治医とよく相談して、納得のいく方法を選びましょう。
生活療法+薬物療法で改善を
出血やおしりの痛み、脱出など、痔が疑われる症状がある場合、まずは大腸の病気など、ほかの原因がないかどうか、検査をして確かめます。
痔であることが確認されたら、生活の改善と薬の使用による保存療法を行います。保存療法を続けても改善がみられない場合に、外科的療法がおこなわれます。
生活療法
痔の治療の基本は、痔の原因となる生活習慣を改善すること。どの段階の痔であっても、大切なことです。痔が治ってからも、再発を防ぐために、生活習慣に気をつけましょう。
- 便秘をしないように気をつける
- 下痢をしないように気をつける
- トイレで強くいきまないようにして、排便は3分以内に
- おしりをいつも清潔に保つ
- 毎日おふろに入る
- 腰を冷やさないようにする
- 長時間の座りっぱなし、立ちっぱなしはやめる
- 辛いもの、アルコールなどの刺激物は控える
- 食物繊維や水分をしっかりとる
- 手軽にできる運動を、毎日行う
- ストレスをため込まないようにする
薬物療法
【外用薬】
坐薬や軟膏などの外用薬は、出血や痛み、腫れなどの症状を抑え、また便をスムーズに出すための潤滑油の役割を果たします。
ステロイド系 | 炎症や痛みを抑える、効き目の強い薬。血栓性外痔核や嵌頓(かんとん)痔核など、激しい痛みがあるときによく使われます。 |
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ビスマス系 | 止血作用があり、出血が多いときに用いられます。即効性がありますが、効き目が強いので症状がひどいときにだけ使います。 |
その他 | 続けて使うときは、ステロイドやビスマスを使っていない薬を用います。作用は弱めで即効性はあまりありませんが、副作用が少ないので長期的に使うのに適しています。 |
[使い方]
軟膏と坐薬の働きは、ほぼ同じです。肛門周辺に塗る場合や、痛みで坐薬の挿入が難しいときは、軟膏を使います。就寝前と、症状に応じて朝の排便後に使います。また、絶対に飲まないように注意しましょう。
軟膏
肛門内に使うとき
- キャップをまわして外す。
- 挿入管の先端のすべりをよくするため、軟膏を少し押し出す。
- 挿入管をつけねまでしっかり挿入し、指で十分に押し出す。
肛門外に使うとき
- キャップをまわして外す。
- 適当な大きさのガーゼの上に、適量を押し出す。
- 患部にガーゼをかぶせるようにして、軟膏を塗る。
坐薬
- 切れ目に合わせて、1回分を切り離す。
- 切り込み部から静かに前後に開いて坐薬を取りだす。
- 中腰になって肛門の力を抜き、先のとがったほうを肛門内に押し込む。
- 奥まで入れて、しばらく手で肛門付近を押さえる。
【内服薬】
便をやわらかくする軟便剤などが使われます。
薬に頼らず、生活習慣を改善して自然な排便リズムを作ることが大切です。
(『これでスッキリ、痔の悩み』岩垂純一監修・講談社より)
point!
おしりの洗いすぎに注意!
痔を防ぐにはおしりを清潔に保つことが大切ですが、温水洗浄便座で洗いすぎるのはNG。特に、きれいにしようと思って肛門の中まで水を入れている人は、今すぐやめてください。かえって不潔になって、ただれやかゆみを起こす原因になってしまいます。また、紙で強くふきすぎるのも、肛門に負担をかけます。肛門の皮膚は、唇と同じくらいデリケート。温水洗浄便座を使うのは5秒間以内にとどめて、あとは水気をさっと拭く程度にしましょう。