脱出する痔核を改善する硬化療法(ALTA療法)
脱出する痔核を改善する硬化療法(ALTA療法)
脱出がなく出血を繰り返す内痔核に対してはフェノールアーモンド油による硬化療法がよく行われますが、最近では脱出する内痔核に対して治療効果の高い治療法として「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)による注射療法」が登場しています。
一般的には、「ALTA療法※」と言われています。
この治療法は、メスで内痔核を切ることなく、ALTAを注射で痔核内に投与することで痔核を固めて小さくし、脱出と出血症状を改善します。
治療にあたっては特殊な投与技術(四段階注射法)が必要なため、決められた手技の講習会を受講した専門医でなければ治療を行えません。
※ALTAとは、有効成分である「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸」の英名ALuminum potassium sulfate hydrate・Tannic Acidの頭文字をとった略です
ALTAの有効成分
ALTA療法とは、硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸(ALTA)を患部に注射し、痔核を直腸の粘膜に固定・退縮させることで痔核の脱出・出血症状を改善する治療法です。
- 硫酸アルミニウムカリウム水和物 出血症状や脱出症状を改善させる
- タンニン酸 硫酸アルミニウムカリウム水和物の作用を調整する
治療にあたっての注意
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以下の方々は、薬剤の特性上、治療が受けられません(禁忌)
- 妊娠している、または妊娠している可能性のある女性
- 授乳中の女性
- 透析治療を受けている方
- 嵌頓痔核の方
- 本剤の成分に対して過敏症の既往がある方
- リドカインに対して過敏症の既往がある方(リドカインを含むALTA製剤を使用する場合)
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以下の方々は、薬剤の特性上、治療にあたっては主治医とよくご相談ください(特定の背景を有する患者に関する注意)
- 全身状態が不良の方(リドカインを含むALTA製剤を使用する場合)
- 心刺激伝導障害のある方(リドカインを含むALTA製剤を使用する場合)
- 前立腺癌等の放射線治療歴のある方
- 腎機能障害のある方(透析治療を受けている方を除く)
- 重篤な肝機能障害のある方(リドカインを含むALTA製剤を使用する場合)
- 小児の方
- 高齢の方
治療のメリット/デメリット
どんな治療法にも、良い面と悪い面があります。
治療法を決定する際には、主治医とよく相談しましょう。
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【メリット】
- 一般的に結紮切除術と比べて痛みや出血が少なく、治療期間も短いため、身体的・精神的負担が軽減されます
- 一般的に結紮切除術と比べて短期入院が可能です(施設によっては日帰り治療を行っている場合もあります)
- 治療費が結紮切除術の1/3~1/2程度(保険診療の場合)で、経済的負担が軽減されます(施設により費用は異なります)
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【デメリット】
- 結紮切除術に比べ再発率が高いとされており、再発の可能性はゼロではありません
- 外痔核には効果がなく、すべての痔核に向いているわけではありません。
- ALTAを患部に注射する手技(四段階注射法)は難度の高い技術のため、この技術の教育を受けた医師が在籍する施設でないと治療ができません。どの病院でも気軽に受けられる治療法ではありません
治療の流れ
- 治療の時に「肛門鏡」という器具を使って痔核を診やすくするために、まず最初に麻酔を行います(一般的に肛門部、または腰部に麻酔をします)。
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1つの痔核に対して4箇所に薬液を分割して注射し、十分に浸透させます。
複数の痔核がある場合にはそれぞれに対して同様に注射します。
この投与法は、一般に「四段階注射法」と言われています。 -
投与後、しばらくすると出血は止まり、脱出の程度も軽くなります。
1週間から1ヶ月前後で投与された部分が小さくなり、脱出や肛門周囲の腫れもひいてきます。退院後もしばらく通院し、治療経過を確認することが必要です。
肛門鏡って、何?
肛門鏡とは、筒型や二枚貝のような形をした器具で、肛門の内部をみるために使います。
肛門に挿入し、軽く開いて肛門内を診察します。多少違和感を感じることはありますが、痛みはほとんどありません。
麻酔について
注射や手術などで痔の治療をする際は、患部局所、あるいは腰椎に麻酔をして肛門括約筋を十分弛緩させて行います。
治療後、麻酔の影響がなくなるまでは医師の監督下で全身状態の観察が行われます。麻酔が切れたあとはしばらく安静にし、激しい運動は避けましょう。
治療後の経過
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以下のような普段と違う気になる症状(副作用)がおこる可能性があります。
治療後は十分に注意し、もし症状が現れたらすぐに受診してください。- 発熱(10日~2週間以内)
- 頭痛
- 気分不快(吐き気・食欲不振)
- ALTA療法を受けた後に他の医療機関で直腸肛門の診察を受ける際には、ALTA療法を受けた旨を必ず医師に伝えてください(注射した部分が硬くなるため、ガンと誤診される可能性があるため)